どうも、鷽です。 今回はサイト更新や同人誌頒布に関する記事ではないのですが、少々重要な告知をさせて頂きたいと思います。 1月23日(水)に発売されました『Role&Roll vol.172』に、当方の作成したクトゥルフ神話TRPGシナリオ「イグアノドン」が掲載されております! ★Role&Roll vol.172の詳細はこちらをクリック⇒公式サイト
こちらが現物になります! 本当はイグアノドンの模型でも置きたかったんですけど、生憎と持ち合わせが無かったため、代わりに科博の恐竜博2016の時にガチャで引き当てたスピノサウルスを置いておきました。スピノかわいいですね(^ω)^
さて、Twitterの方で何度か告知させて頂いていた通り、同作は「アーカム計画『クトゥルフ神話TRPG』シナリオ・コンテスト2018」において優秀作に選ばれたシナリオとなっております。 審査・選定して頂いたアーカムメンバーの皆様、そしてテストプレイ・シナリオ推敲等でご協力頂いた皆様、改めまして本当にありがとうございました……! 「イグアノドン」に興味のある方は、是非とも今月号のRole&Rollをお買い求めください! また、シナリオコンテストの総括コメントも掲載されておりますので、今回シナリオを投稿された方、あるいは今後投稿を考えておられる方は、是非ご一読ください。
……さて、告知だけで記事を終わらせるのも味気ない(?)ので、今回は拙作「イグアノドン」についての掘下げ、キーパーリングのコツ、改変プランの提案等を記載していきたいと思います。 以下、同作のネタバレを含みますので、未プレイ・未読の方はブラウザバック推奨です(“シナリオ内容を知っている”前提で記載していきます)。
(ネタバレ防止スペース)
(Are You Ready?)
\できてるよ/
1.シナリオ作成の経緯
「イグアノドン」はシナリオコンテストの開催を知ってから考え始めたシナリオでした。 投稿するにあたり、一番大切にしようと思ったコンセプトは「自分の好きな要素を詰め込む」というものです。 数多のシナリオの中で埋もれないようにするには、やはり自分の好きなこと(より具体的に言うと、“詳細に書き込む”のが苦にならないこと)を題材にするのが一番だと思ったからです。 無理に個性を出そうとして、奇をてらった設定・要素を持ち出してみても、その為だけに身につけた付け焼刃の知識ではシナリオの整合性を保てなくなる危険性もありますからね。これは自分の他シナリオに対する戒めでもあります。 さて、そのコンセプトを定めた後は……瞑想して幼少期から今に至るまでに“好きだった物事”について思い返してみました。途中、中学二年生の頃の†天使と悪魔†がどうのこうのみたいな漫画のネームを描いていた記憶が蘇って危うく死にかけました。多分まだ実家にある。 紆余曲折を経た結果、小さい頃からよく出入りしていた地元の博物館をモチーフにシナリオを作成することを決めました。また、特に好きだった“恐竜”から連想を繋げたことで、イグアノドンとボクルグとの親和性に辿り着くことができました。
2.シナリオの“構造”
本作は所謂クローズドサークルものとなっており、作成にあたっては内山靖二郎氏の「腕に刻まれる死(『クトゥルフ2010』収録)」の影響も強く受けていると思います(自己申告)。 今回のクローズドで拘ったのが、「外部との連絡は取れるが脱出できない」という状況です。 クローズドにありがちな「何故か圏外」、「外部の人間は何をやっているのか」といった不自然な要素を排し、シナリオの裏設定(終了後にプレイヤーにのみ開示される情報)としてではなく、探索者たちが行動の中で自らの現状を把握できる……という状況を目指しました。 本筋とは関係ない要素ではありますが、キーパーとしては探索者サイドの“現代人として当然の行動(外部に連絡を取ろうとする)”に対応しやすくなるとともに、閉鎖空間に適度な“緊張感”を演出するためにも役立ったのではないか、と思っています。 また、もうひとつの重要な要素は「黒幕が真っ先に脱落する」という展開ですね。 露骨に怪しいキャラがいきなり脱落する……という展開はインパクト(?)がありますし、それと同時に「何とかアイツの遺体(死んでないけど)に辿り着ければ、事件解決の決定打になるハズだ」という“無言の情報”をプレイヤーに与えることができます。それにより、探索者たちも行動指針を決定しやすくなるだろうと考えたのです。 白亜の元に辿り着く方法はプレイヤー毎に千差万別で、展示品で着飾って踊りだすユニークな方もいれば、来人が亡霊に襲われないことに気がついて、彼に回収しに行ってもらうようお願いするというクレバーな方もいました。 本作のキーパーをされる方は、是非プレイヤーの自由な発想を尊重してあげてください。
3.NPCについて ・三条南→三畳→三畳紀 ・千住来人→セン“ジュラ”イト→ジュラ紀 ・白亜豊→そのまんま白亜紀 ……はい。この名前遊びのためだけに三条さん離婚させて子どもの名字変えました(自白)。 結果として来人の泣き虫設定、母子の繋りなんかを補強できたので、よかったのでは無いでしょうか、多分。あと同じ苗字のキャラが2人いるとややこしいですし。
なお、キーパーする際に離婚設定が不要に感じたら来人の名字は三条にしちゃっても大丈夫です。 3人とも行動理念が分かりやすいので、キーパーとしては扱いやすいキャラクターたちなのかな、と思っています。特に白亜は死ぬほど怪しく、ラスボス然とした不敵な態度を「これでもか!」と演出してあげるとよいでしょう。出オチ感が増します(かわいそう)。 あと、来人の名前は二色のライダーの影響もありますね(※敵組織が“ミュージアム”)。
さあ、お前の罪を数えろ>(0||0)
4.キーパーリングのコツ
このシナリオを回す際のコツとして、「プレイヤーの行動に合わせてNPCの配置を柔軟に変更する」というものがあります。 序盤に中々来人に出会えないと、プレイヤーは探索を冗長に感じてしまうかもしれません。また、三条の発見についても探索者が無茶をする前(例えば、事件の背景がよくわかっていない段階で環状列石を壊そうとした場合など)に差し込まなければなりません。 本作は「NPCと出会うと探索範囲が広がる」という構造になっているため、出会いのタイミングを調整することで、よりスムーズに物語を演出できると思います。 自分も三条南を「常設展示室1」に配置し、クマの剥製の下敷きにしたことがあるので、皆さんも思い思いの展示品で三条さんを押し潰してやってください。 また、亡霊たちの襲撃イベントについても闇雲に起こさずに、「探索者が千住来人と合流する前に1回」、「来人と合流した後、三条南と合流する前に1回」……程度を目安にしておくとバランスが取れると思われます。実際には来人と真っ先に合流するパターンもあると思いますので、そのあたりは臨機応変に対応願います。
この際、「POW吸引だけでは死亡しないことが分かるので、プレイヤーに危機感を与えづらい」……と感じる方は、亡霊に直接的な攻撃手段(例えば、ミ=ゴの噴霧器のような冷気攻撃)を設定して見るのも面白いかもしれません。強くし過ぎると逆効果なので、バランス調整は慎重に。
5.シナリオ改変案(戦闘エンド、探索者だけ脱出エンド)
さて、ここまでの記事でも改変の余地がある部分について触れてきましたが、私は「シナリオは自分(キーパー)及び参加者の趣味趣向に合わせて改変しても構わないものである」と考えています。TRPGという遊戯において最も優先されるべき事柄は、「キーパーも含めた参加者全員が楽しめるようにする」ことであると思っているためです。
他者のシナリオを読んだ時、以下のように感じた経験はないでしょうか。
「このシナリオ、事件の背景は好きだけど……探索が一本道過ぎるのがなぁ……」
「探索時におけるギミックは面白いけど、クライマックスのインパクトが弱い気がする……」
そんな時、シナリオに自分好みの要素をプラスしてみるとか、あるいは身内の仲間が好きそうな展開・キャラクターを用意してあげることができれば、その卓は非常に楽しく、充実したものとなるのではないでしょうか。
……と、いうわけで。本記事では「イグアノドン」において、「別のエンディングルート」と「クライマックス戦闘」を追加する改変案を提示しておきたいと思います。
シナリオ制作者が提示しているとはいえ、これは非公式の改変案であり、あくまで一例に過ぎないということを念頭に置いて読むようにしてください。
(1)《門の創造》による脱出ルート
シナリオにおいて、白亜豊の日誌からは《門の創造》を修得できないものとしていますが、ここを改変して探索者たちに《門の創造》を修得するチャンスを与えるというものです。
するとどういうことが起こるかというと、同呪文により探索者たちだけが博物館外へと脱出するというルートが想定されるようになります。
脱出先は外にある本物の環状列石などが相応しいでしょう。中庭のモニュメントを正式な環状列石と同じ形に再配置し、《門》にする……というプロセスも自然に追加できますからね。
こちらのルートへ進んだ場合、脱出しようとする探索者を阻止しようとイブの亡霊たちが襲い掛かってくることでしょう。探索者は門の並び替え、詠唱の準備等にかかる数ラウンドの間、亡霊たちの攻撃をしのぎ切らなくてはなりません。一連の戦闘ラウンドがクライマックスの処理となります。
探索者たちが脱出に成功すると、亡霊たちは人間の増援を恐れて博物館を丸ごと別の場所へと転移させてしまうことでしょう。館内に居た人々は行方不明となり、逃げ延びた亡霊たちはイグアノドンの骨格標本(≒ボクルグの亡骸)を取り巻き、未知の世界(覚醒の世界)で永遠に嘆き続けることになるのです。
ここで注意すべき点は、このルートは決してバッドエンドではない、という点です。
探索者たちは手にした情報から適切な脱出の方法を導き出しているのです。“亡霊との対話”というリスク(探索者・プレイヤー目線では、亡霊たちが話の通じる相手かどうかは未知であり、会話で刺激したことにより一層激しく攻撃されてしまう危険性を考慮せざるを得ない)を犯さずに逃げ延びることは、ある意味では正しい選択肢だと言えるでしょう。
クトゥルフ神話TRPGは自由度の高いシステムですので、選択肢に唯一の正解・不正解は無いと考えています。それぞれの卓で選んだ選択肢が正解ですし、それによる結末に優劣・区分(ハッピーエンド、バッドエンドなど)は無いはずです。
この改変案を参考にする場合、そのことを念頭に置いて処理するよう心がけてください。
(2)クライマックス戦闘
このシナリオのクライマックスは、ドリームランドへの転移・ボクルグの出現等の見所はありますが、「やはり最後はインパクトや緊張感が欲しい」と考える方もいるでしょう。
そんなときは……やっちゃいましょう、ボクルグとの戦闘!
《門》から突如現れた人間を不審に思ったボクルグが、探索者たちに襲い掛かってくるのです!
もっとも、まともにやりあうのは厳しいので、こんな改変案はいかがでしょうか。
探索者たちは千住来人を通じて、亡霊たちのテレパシーでボクルグを〈説得〉するのです。
戦闘の処理として、探索者たちは自分の手番において攻撃を行う代わりに〈言いくるめ〉、〈説得〉等のコミュニケーション技能を使えるものとします。場合によっては、亡霊・ボクルグの生態を把握して対応する……という意味合いを込めて、〈生物学〉、〈博物学〉等も使用可能としてもよいでしょう。また、軽いコミュニケーションであれば〈回避〉と併用できるとするのもアリです。
これらの交渉系技能に3~5回程度成功すれば、ボクルグは攻撃の手を止め、シナリオ記載の通り来人を救い、探索者たちを見逃してくれるのです。
一方、ボクルグの側も各ラウンドに攻撃を行ってくることでしょう。ただし、ルールブックに記載の攻撃方法では命中率・威力とも高過ぎるきらいがあるため、調整の余地があります。
例えば、探索者たちがイブの亡霊たちを伴って現れたことを鑑みて、ボクルグが様子見をして攻撃を“手加減”してくれる……という処理です。この場合、ダメージロールを振る際にダメージボーナスを考慮しない、とするのがよいでしょう。
あるいは、ボクルグに特定の呪文を修得させておくというのも手です。軽いものですと《恐怖の注入》や《破壊》、少し重くするなら《手足の萎縮》などが相応しいでしょうか。
巨体の神格との戦闘はクライマックスを盛り上げてくれることでしょう。刺激が欲しいキーパー、プレイヤーのいる卓においては有効な改変案だと思われます。
さて、いかがだったでしょうか? 本編では書ききれない情報もあったので、記事としてまとめることができ嬉しく思っています。……少々長くなってしまいましたが。
今回、好きな要素を詰め込んだシナリオが栄誉ある賞を頂けたことで、自分に自信がついた……ような気がします。何分、賞とは無縁な人生を歩んできたもので……感無量です。
今後も多くの人たちに「面白い!」、「楽しい!」と思って頂けるような作品を作り続けていければいいな、と思っております。何卒よろしくお願いします!
現在、春のゲームマーケットに「埒外の世界」を中心に据えたキャンペーンシナリオ集を出展しようと画策しており、シナリオ本文・表紙イラスト等を鋭意準備中です。
それとは別に、Roll&Role誌へ寄稿できるようなシナリオ、コラム等の計画もありますので、時間はかかるかもしれませんが、またどこかで皆さんのお目にかかれることを願っております。
それでは、ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
良きTRPGライフをお過ごしください!